コンテンツへスキップ →

メンタル疾患が疑われる職員対応(1)

ある事務長の悩み

「正規職員で採用した医事課の女性職員が試用期間中なのに休みがちで、入職後1か月ほどで出勤してこなくなくなりました。本人と連絡は取れていて、どうやら当院に入職する前から適応障害を患っていたようです。試用期間中なので規程どおり普通解雇としても問題ないと思うのですが、まだ20歳の本人のためにも解雇扱いにはしたくないところです……」

 医療・福祉は他業種に比べてメンタル不調者が多い業種ですが、休職規程を適用するまでもなく、「辞めてもらう」選択肢を取らざるを得ない場面が現実としてあります。

 たとえばこんな場面でも…。

メンタル不調で本採用拒否。法的に問題はないけど…

 昨年のこと、この女性職員の扱いについて事務長に相談されたときは正直つらいなと感じました。私の長男も事務長の長女も当時同じ20歳ということもあり、我が子のように感じて……。

 このケースは法律的にはいたってシンプルな事案です。状況的に、就業規則の本採用拒否事由「心身の健康状態が悪く、業務に耐えられない」に該当し、入職日から14日を経過しているため解雇予告手当を支給して普通解雇となります。ただ、実務上は、本人と話し合い、退職勧奨による自己都合退職とすることも多いかと思います。

 また、試用期間中の職員および採用後1年未満の職員は休職規程の適用対象外としていますが、通常、採用間もない期間のメンタル疾患については、原因が採用前の時期の出来事に起因していることが多いからです。

 ただし、このケースは法律や規則を根拠に事務的に解決してそれで済ませていい問題なのでしょうか。

 私と事務長は、まだ20歳の、メンタル疾患の女性に解雇や採用拒否という体験をさせていいものかと思料しました。

 理由を聞けば、当院に応募してきたのも「働かなくては」という焦りから、適応障害であることを隠して採用され、無理をして働いたようです。窓口対応もある医事業務ですから、そうした影響も少なからずあったのかもしれません。

 私は事務長と相談し、試用期間中の決まり事や今の状態では病院で働くには無理があること、働くことを急がず、静養してから他の仕事を探したほうがよいことなどを事務長から上手く説明してもらいました。

 結局、本人と母親が相談して自主退職することになりました。

採用面接で既往歴を確認することの是非

 この女性の採用面接を担当したのは事務長ですが、面談の際、言動や雰囲気からメンタル不調はおおよそ疑われたそうです。ただ、医事課は喉から手が出るほど人手が不足していたため、〝怪しい〟と感じながらも、人柄が良さそうだったので採用したようです。

 メンタル不調の問題が出ると、採用面接の際に精神疾患の既往歴を確認することの是非についてよく問われます。施設によっては「服用中の薬剤」を面接で確認するケースもありますが、これは慎重に行うべきです。

 職業安定法との関係では、本人の同意があれば、メンタル疾患の既往歴を確認することは、業務の目的の達成に必要な範囲内といえます。服用中の薬剤を確認することについても、たとえば車を運転する送迎ドライバーならより合理性が認められるでしょう。

 個人情報保護法との関係についても、既往歴や服用薬剤に関する情報は「要配慮個人情報」に該当しますが、これも本人の同意があれば面接で確認することは可能です。ただし、回答を強制するような質問の仕方は避けるべきです。

 いずれにしろ、採用面接で既往歴や服用薬剤について応募者が正直に答える可能性は低く、その場合でも、後々になってメンタル疾患が問題になった際に採用面談での虚偽申告を問える可能性が多少ある程度と考えるべきでしょう。

カテゴリー: 介護 医療

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です