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宿日直許可事例-救急搬送年6,000件超申請から8日で許可が下りた民間急性期

本年も変わらずよろしくお願い申し上げます。

昨年の5月10日以来のブログ投稿となります。

 すべての勤務医の労働時間に上限が設定される時間外労働の上限規制がいよいよ4月からスタートしますが、医師の労働時間数の削減に直結するのが、昨年から申請が急増している宿日直許可申請です。ただ、申請は急増しているものの、一部の大学病院や急性期病院などでは、労基署に申請したが許可が下りない、許可申請できるだけの勤務体制になっていないといったケースが少なくありません。

 宿日直許可の取得を迫られているなかで、B水準及びC-1水準(専攻医)を指定申請中の民間急性期病院(261床)において、昨年12月、申請からわずか8日という早さで許可が下りた事例を紹介します。この病院は、年間の救急搬送件数が約6,700件、宿日直中の患者対応時間が2時間超(当直医1人平均)という勤務態様のなか、当番日を除外し、待機時間(睡眠等)を可視化することで迅速な許可につなげたケースです。

事務当直日誌が資料作成に効果大! 二次救急の当番日を除いて申請した結果

 宿日直許可申請については、2023年の春から秋にかけて申請が急増しました。「医師の2024年問題」を見据えたなかで、「許可されるべきではない医療機関まで許可されている」という報道も多く、以前に比べれば、そうした傾向が実際に見られることは私も実感しています。

 しかし状況は切実です。医師を派遣する大学病院からは宿日直許可の取得を迫られ、医師の労働時間の削減が必至の急性期病院では、「どんな形であれとにかく許可を取る」ことが求められています。

 私の顧問先の急性期病院の事例ですが、年間救急搬送件数が約6,700件(2022年度実績)の総合病院で、2021年度の8,000件超からは削減していますが、県下の民間急性期病院のなかでも最も許可が得られにくい病院の一つに数えられています。医師は41名在籍していますが、専門外等の理由で実際に宿日直に就く医師は常勤21名、非常勤4名の計25名で担当し、「ほぼ勤務医で宿日直を回している」のが現状です。

 宿日直勤務は、内科系と外科系の2名体制を基本とし、当番日の種別によっては外科系2名の3名体制とします。宿日直中に従事する業務は救急外来対応がほとんどで、診察や検査、症状によりそのまま入院対応となりますが、手術等は当直医ではなくオンコール医師が対応します。死亡確認などの入院患者対応は月に数回あるかないか程度という状況です。

 そこで、宿日直中の対応業務と対応時間の集計表(表2)を作成し、労基署に提出。

 1回の宿日直の対応時間が医師1人平均2時間20分(概算)。救急患者が多い当番日は医師1人で5、6時間対応することも珍しくなく、非当番日でも対応時間が医師1人で3時間を超えている日も多いのが実情です。二次救急の当番日は許可されないケースが多く、事前に労基署に相談してこの病院の当番日はまず許可が下りないことは承知していました。そこで、当番日のなかでも対応件数が多い「夜間二次内科」、「夜間外科の整形外科」、「休日二次の内科」(表中太枠)を申請対象から除外、昨年12月に労働基準監督署に申請した結果が下記のとおり。

●12月6日 労基署の窓口で申請書類を提出。勤務状況や資料内容等の詳細を説明

●12月12日 実地調査。監督官1名来院。申請内容の確認と、医師2名にヒアリング

●12月14日 18時、労基署より「許可」の連絡あり。翌15日に窓口で許可書を受領

 申請から実地調査を経て、わずか8日で許可が下りました。当番日の一部を除いて申請したことはもちろんですが、医師が対応した時間帯の分布を図表化して待機時間(睡眠等)を可視化したこともスピーディーな許可につながったものと思われます。

  なお、対象外とした当番日については、夜勤扱いとして残業代を含めた相応の賃金を支給することのほか、大学病院の勤務医は特に労働時間の通算問題はありますが、非常勤を採用する方向でも検討しています。

「どれだけ睡眠がとれているか」を可視化した分布表を作成・提出

 申請書類のなかで最も重要なのは、宿日直中に従事した業務内容、業務内容ごとの対応時間がわかる資料、つまり「勤務の態様」を可視化した表2のような書類です。

 医師当直日誌や電子カルテのログ記録だけでは対応時間等はまず把握できないため、患者の受付時間と救急件数、入院患者の対応時間と件数の実態が把握できる事務当直日誌と一部医師へのヒアリングをもとに作成しました。救急外来対応は、平均して診療対応1件20分、入院対応1件35分(共に検査指示は5分)と算定しました。この点は、厳密な時間を把握することが困難な場合が多いため、概算による「平均値」で算出しても監督官から指摘されることは少ないです。ただし、実地調査で医師へのヒアリングの際に、提出資料の内容と当直医の認識の乖離を指摘される場合があるため、対応時間を〝丸める〟にも程度があります。

 ちなみにこの病院、検査科などコ・メディカルも当直体制をとっており完全分業制のため、医師が直接検査を行うことはありません。逆に言えば、当直時間帯は医師自ら検査していることもあるため、そこを監督官に指摘されることもあります。

 で、ここまでの資料はどの病院も作成・提出していて? 都道府県の医療機関勤務環境改善支援センターのアドバイザーもここまでは助言・サポートをしているようです。

 しかし、このデータだけでは1人の医師が対応する時間数の多さだけが際立ってしまい、どれだけ睡眠がとれているか(待機時間があるか)という実態が見えません。宿日直の許可要件では、宿日直中に対応した時間数以上に、どれだけ睡眠がとれているかが重要です。一般的に「6時間以上の連続した睡眠」が平均して取とれているかという休息要件が重要です。そのことを可視化するために、医師がどの時間帯に対応しているかを分布図として示した資料を表2の補完資料として作成し、労基署に提出しました(表3)。

 表を見てわかるように、非当番日に対応時間が2、3時間を超えても、連続した待機時間(睡眠等)が8時間以上という日もあり、整形外科を除く外科系は連続した待機時間が10時間以上ある日も複数日あります。この表については、労基署の監督官も「非常にわかりやすいですね」という反応でした。また、「うちは無理だよ」と宿日直許可をあきらめていた事務長や病院長も、この分布表を見て、「けっこう休めているんだな」と、自院の宿日直勤務の実態を知る機会にもなりました。

 また、この表については、労基署の実地調査の前に、副院長や数名の医師にも確認してもらっており、待機時間イコール睡眠時間ではないものの(当然ですね)、おおむね実態に近いという評価を得ていました。そのため、実地調査での医師へのヒアリングの際にも、監督官に矛盾を指摘されることはありませんでした。

労基署により判断基準が異なる?! 〝ブラックボックス〟は承知のうえで臨むべし

 宿日直許可については、誠に残念ながら「労基署により判断基準や対応が異なる」ことは否定できません。むしろ当然です。例えば「睡眠時間」の要件ひとつとっても同じ県内の労基署でこれだけ違います。

A労基署 「継続した6時間以上の睡眠がとれているか」(これが標準)

B労基署 「睡眠時間は断続時間を含めて約6~7時間」(断続を含める?)

C労基署 「12時間の宿直のうち200分までの業務はOK、残り500分睡眠がとれればOK(?)

 また、申請から許可が下りるまでの期間についても労基署の人員体制により異なります。今回は規模の大きな労基署でもあり、運よく8日で許可が下りましたが、ローカルな別の労基署に申請した「100%寝当直」の精神科病院の宿日直許可を申請した際は、「監督官が1人しかいない」ということもあって、許可が下りたのはなんと申請から57日後でした。

 宿日直許可をこれから申請しようという病院は、こうした実態も踏まえたうえで、労基署への事前相談をしっかりと行い、改善できることは改善し、監督官を納得させられるだけの資料を作成・提出することが肝心でしょう。

カテゴリー: 医療

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