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医師以外の「副業・兼業」(2)

ある看護部長さんの悩み

「コロナ禍で退職者が増えた影響で夜勤帯の人員が不足しているため、夜勤専従者の採用を検討中です。パートの夜勤専従者を採用する予定ですが、業務内容や報酬面、健康リスクの問題など、どのように留意すればよいか」

 常勤が副業先で夜勤を行う前回(1)と逆のケースですが、応募者の副業・兼業の状況をきちんと確認して採用することです。夜勤専従で働く看護師のなかには、平日は日勤で働き、土日に他の病院で週1勤務の夜勤専従で働くケースがあります。この場合に、週40時間を超えた時間は時間外労働とされるため、原則論としては「後で契約した」あなたの病院に割増賃金の支払い義務が生じます。

 また、Wワークによる健康リスクの問題も無視できません。

 この看護師が疲労などで仕事の途中に倒れ、負傷や死亡した場合、Wワークが本人の意思であっても、この看護師が平日に他の病院で働いていることを承知のうえで雇用したあなたの病院が安全配慮義務違反に問われ、損害賠償責任を負い兼ねません。本業と副業のどちらが直接的な原因なのかはっきりしない場合であっても、共同不法行為(民法719条1項)に基づき、連帯して責任を負う可能性もあります。

 いずれにしろ、夜勤専従者の採用については慎重に検討すべきでしょう。

常勤者から夜勤専従を募る場合の注意点

 夜勤者不足を補う施策として、フルタイムの正職員に「3か月」など期間限定で夜勤専従勤務を行ってもらうケースがあります。もちろん希望者のみですが、常勤スタッフのなかから夜勤専従を募ると1人、2人は必ず手を挙げるという話をよく聞きます。「中には、日勤スタッフと馴染めなかったり昼間の人間関係に問題を抱えている人も」(某看護部長)と背景はさまざまですが、パートの夜勤専従者を新たに雇用するよりリスク回避はできるでしょう。

 夜勤専従勤務について労働基準法に特段の規定はなく、交代制勤務に就く常勤職員と同様に、変形労働時間制の1か月の労働時間の上限(30日の月なら171.4時間)を超えないようにシフトを組みます。

 他方、診療報酬上の夜勤専従者の夜勤時間数について現在では規制がなく、日本看護協会がガイドラインで「上限144時間」を維持しているのみです。そのため、144時間を意識しつつ、本人の希望と人員体制により月10回程度行ってもらうという病院も少なくありません。

夜勤専従勤務の労務管理上の留意点

■健康管理に十分配慮する

 当然ですが、夜勤専従業務に就く前の健診及び6か月以内ごとに1回の定期健康診断を確実に実施します。

■本人が選択して業務に就く

 交代制勤務の常勤看護師が夜勤専従勤務に就く場合は特にそうですが、夜勤に伴う心身の健康リスク、処遇などを十分に説明し、本人が納得したうえで勤務変更を行うことです。夜勤のできる人員がどんなに不足していても半強制的に夜勤専従をさせることは避けましょう。

■夜勤時間帯の業務整理をする

 パートで夜勤専従者を採用する場合は担当させる業務の内容を整理しておかないと本人も同僚も混乱します。夜勤メンバーの構成上、夜勤専従者に業務や責任が集中しないように配慮する必要もあります。准看護師、看護補助者との組み合わせで他に看護師がいないなどは問題があります。

■能力・経験を考慮する

 任せる業務にもよりますが、夜勤業務が遂行可能な能力・経験があるかを判断します。部署への異動後間もない、経験年数が浅い、非常勤パートであるほどリスクは大きく、一緒に夜勤に就く同僚の負担になってしまっては専従者を導入する意味がありません。

■院内ルールを明確にする

「常勤者の夜勤専従勤務」として、労働時間・休日、処遇を明確にし、就業規則に規定して職員に周知することです。

 非常勤の夜勤専従者と同様に、夜勤時間数の上限144時間を適用したうえで、夜勤専従勤務の労働時間、休日、処遇などを明確にして就業規則に規定します。大事なのは、上限の144時間を適用すると、交代制勤務者よりも月の総労働時間が短くなり、休日数が多くなることを看護部内で周知しておくことです。そうでないと、「なんであの人だけ休みが多いのか」とヘタな不満が出てしまいます。

「夜勤専従勤務はフルタイムの正職員より勤務時間が短い」ということを仕組みとして置づけて、職員に周知しておくことが大切です。

カテゴリー: 介護 医療

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