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宿日直許可事例-非常勤当直で起こる回数上限超えの克服

 2024年3月31日までに都道府県から特例水準の指定を受けるため、医療機関勤務環境評価センターへの評価受審の申し込みはこの5月から7月に集中しそうな状況ですが、著しい進捗を見せているのが医師の宿日直許可申請です。昨年から医師の派遣元である大学病院が関係医療機関に宿日直許可の取得を要請していることが申請件数急増の要因ですが、大学病院から宿日直要員として非常勤医師派遣を受け入れている民間病院の直近の宿日直許可事例をとりあげます。

 宿日直要員として大学病院の医師に依存している病院でよくみられるのが、土曜日の宿直→日曜日の日直→日曜日の宿直という土日連続当直です。大学病院の若い先生は「稼ぎたい」と、病院(特に田舎の病院)は「相応の金額を出すからこんな田舎でも来てもらえる」と、言わばWin-Winの関係で成り立っています。しかしそこには、実態が“寝当直”であるのに、土日連続当直が原因で宿日直の回数上限を超えてしまう状況があります。

一時的な上限超えなら適正化した「予定表」を併せて提出

 この許可事例は、私の顧問先のひとつのA病院(精神科・内科。397床)において、今年3月から4月にかけての年度末の時期をはさみながら許可を得られたケースです。

 A病院で宿日直を行っているは、医師30名(常勤8名・非常勤22名)のうち、常勤は病院長1名のみで、あとは非常勤16名がシフトで行い、大学病院の非常勤医師への依存度が高いのが特徴です。宿日直勤務は典型的な〝寝当直〟であるため、勤務態様そのものは許可要件に適うと確信していましたが、宿日直の回数上限(宿直は週1回、日直は月1回)をどうクリアし、どのような添付書類を揃えるかということに少々苦慮しました。

 労働基準監督署に提出した申請書類(1)のなかで、宿日直の回数に係る確認書類として提出したのが④⑤⑥の3つ。宿日直許可の申請ラッシュの昨今、確認書類として求められるのは直近1か月分だけというケースが多くなっています。

 宿日直を大学病院等の非常勤医師に依頼する場合によくあるのが、「土曜日の宿直→日曜日の日直→日曜日の宿直」と続ける連続勤務です。A病院の場合は35時間勤務(当直手当19万円)ですが、「稼ぎたい」先生と、「高額を払ってでも来てもらいたい」病院のWin-Winの関係で成り立っています。しかし、この連続当直が回数上限を守るためのネックとなりやすいのです。

 1週間とは、特段の定めをしていなければ「日曜日から土曜日まで」をいい、土曜日の宿直と日曜日の宿直は「別の週」にカウントされるため「週1回」の原則は守ることができます。ただし、土日当直の前後6日以内に宿直を行うと「週2回」となって上限を超えます。A病院では、基本的に回数上限を守っているのですが、ここ数か月間は医師の希望や人員調整の都合がつかないため、一部の医師について上限回数を超える状況が発生していました(2)。この状況はほかの月でも発生しており、なかには祝日の関係で日直が「月3回」になってしまった先生もいました。

 例えば、表2にあるように、2月は4名の先生が回数上限を超えています。

 S先生(毎週水曜日の宿直担当)は、2月4日(土)と5日(日)の連続当直により、T先生(毎週木曜日の宿直担当)は、2月18日(土)と19日(日)の連続当直により、それぞれ宿直の回数上限を超えています。

 さらに、通常は「日勤」としている土曜日が祝日にあたる場合は「日直」として取り扱っているため、I先生とK先生については2月11日(土)・12日(日)の連続当直により日直が2回となってしまったものです。

 許可申請に向けて事態改善のため、人員体制を再整備してもらい、土日連続当直を行う場合は前後1週間に宿直を入れないこと、土曜日が祝日でも日直ではなく日勤と扱うこと等を徹底し、4月以降は上限回数を超えない勤務体制に適正化しました。また、どうしても人員調整がつかない場合は、まだ30代の病院長(労働基準法第41条2号の管理監督者のため宿日直許可は不要)が非常時は当直に入り、柔軟に対応することとしました。

 このようなケースの場合、問題となった月の勤務表と改善した勤務予定を併せて提出すれば認めてもらえます。それに加えて、上限超えの経緯と適正化の内容等を説明した「⑥医師の宿日直勤務に係る補足事項(申立書)」を併せて提出しました。

宿日直中の対応業務、対応時間の集計表を作成・提出

 宿日直許可の申請書類の中で最も重要なのが「勤務態様」の実態を証明する書類です。通常、医師が記入する当直日誌と電子カルテのログ記録を元にした資料の提出を求められますが、当直日誌では対応時間がまず把握できません。電子カルテのログ記録も、開きっぱなし、治療中断(検査等に回る)による入力忘れ、逆に再開の指示忘れなどがあって、これも適正な時間が読み取れないケースが多々あります。「看護師に依頼して看護記録に記録して申請してくる病院もある」と助言する監督官もいますが、救急対応の多い急性期病院は特に、現実的には疑問が残ります。

 そこで、宿日直中の対応業務、対応時間を独自に表形式にまとめたものを確認資料として提出しましたが(下表)、こうした表を独自に作成して提出しても問題はなく、むしろ監督署ではこうした確認資料の作成・提出を促しています。

 最後に、申請資料の「⑨非常勤医師報酬額等のお知らせ」とは何かというと、雇用契約書(労働条件通知書)に代わるものとして提出した、先生方に宿日直手当等の金額等を通知した書面です。ご多分に漏れずA病院も、医師と雇用契約書を交わしていませんが、宿日直許可申請においては、宿日直手当の金額が解るものであればこうした書面でも認めてもらえます。

カテゴリー: 医療

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