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続・看護職の働き方改革(7)

ある看護部長さんの悩み

「時間外申請などで管理できる超過勤務はまだいいのですが、看護職の始業前の準備行為(いわゆる〝前残業〟)や勤務時間外の研修参加、持ち帰り残業などサービス残業を解消するためにどのように取り組めばよいか悩んでいます」

前残業など〝サービス残業〟をどう解消するか

 2021年3月に日本看護協会が公表した「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」の5要因・10項目では、前残業などの可視化されていない時間外労働の取り組みにも言及しています。同協会の調査では、「前残業」を時間外労働として扱っていない病院が62.9%、勤務時間外に開催する院内研修を時間外労働として扱っていない病院が26.4%に上るとしています。

「前残業」の問題は、当ブログでも何度か事例を紹介しながら取り上げましたが、要点を整理しておきます。

◆始業時間前の出勤の取り扱いを明確にする

 前提として、始業前の時間は、所属長の指示があった場合を除いて「労働時間として取り扱わない」ことを看護部の方針として周知しておく。

◆早く出勤して「何をしているのか」を把握する

 情報収集(多くの病院ではこれが4、5割)、検温・採血、物品・機器の準備・確認、点滴の準備・確といった行為は基本的には給与支払い対象になり得る業務です。対象者が限られた人ならヒアリングで、大所帯ならアンケート調査を実施しましょう。

◆「なぜそうしているのか」を把握する

「患者の安全のために情報収集は必要」「情報収集をしないと不安だから」といった理由であれば、入室時間を規制するなど一定のルールを設ければ改善が見込めます。他方、「始業前に情報収集をしないと業務に支障をきたす」「勤務を開始してからでは情報収集ができない」といった理由なら(実はこうした理由がいちばん多い)通常業務や人員体制など根本的な見直しが必要です。

◆引き継ぎと情報収集の工夫

 個人的な情報収集は一定程度容認しても、時間短縮は必要です。ただし、「勤務開始30分前のナースステーションの入室禁止」など、時間で規制するのは問題の深刻度によります。1時間以上前に出勤するスタッフが多いような場合は段階的に改善していくなど、経過措置が必要な場合があります。

 また、勤務時間内に情報収集する時間を確保することを検討する必要もあります。情報収集の方法を変更する必要もあります。情報共有一覧シートを作成して最低限取るべき情報を決めるなど「必要な情報」を整理し、情報の伝達の仕方を工夫する。また、ベッドサイドで前勤務者と患者情報の確認を行うようにして前残業を改善した事例もあります。

時間外の院内研修は「労働時間」が基本!

 勤務時間外に開催される院内研修については、基本的に時間外労働として取り扱うものと考えてください。残業として扱わなくてもいいのは、「出席が任意で、出席しなくても不利益はない」場合のみと考えてください。

 医師にも働き方改革を迫る今の時代、院内研修は「労働時間かどうか」というレベルで議論すべき問題ではありません。

 出席率が厳しく問われる医療安全や感染症対策などの法定研修の場合、出席率を担保するために開催方法を工夫している病院も多く見られます。

◆法定研修は職員全員が受講できること、勤務時間内で行うことを徹底するため、1回30分に短縮して年8回開催。それでも受講できない職員にはe-ラーニングで自己学習してもらう(200床以上、急性期)

◆法定研修は外来が休診の土曜日の午後の時間帯(14時~16時)に実施。30分研修を6回、勤務時間内に、原則強制参加で実施。出席できない職員にはDVD研修も用意(200床未満・ケアミックス)

◆2か月に1度開催している職場ごとの課題発表(勉強会)の場を利用して法定研修を実施する。日勤時間外の17時30分以降に実施する場合は時間外勤務扱いとしている(200床未満、ケアミックス)

◆時間外手当の対象としていない課長職以上が出席する研修は日勤終了の17時以降に実施し、時間外扱いとはしない。そのほかの研修や委員会は勤務時間内に実施するよう徹底(200床以上・急性期)

◆看護部内の勉強会は勤務時間内に実施(13時30分、15時など)。法定研修は17時以降に実施。強制参加とせず、出席できない人にはDVDを貸与。感染対策研修はポスターセッション(ポスター展示)を実施し、空いている時間に見られるようにして看護職に好評(200床以上・ケアミックス)

 なお、勤務時間外に行う勉強会や研修会は任意参加としているものの、一部の病棟師長の指示で非番のスタッフも半強制的に参加させられているケースもみられるので研修の取扱いは明確にしておくべきでしょう。

カテゴリー: 介護 医療

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