after・withコロナ――
労災になる腰痛 ならない腰痛
移乗介助や入浴介助がつらい――。
看護・介護職の腰痛は「職業病」とも言われますが、ストレスの高い職場ほど腰痛の発生率も高く、昨今のコロナ禍のストレスも無縁ではありません。しかしながら、看護師の場合はとくに、
「腰痛があっても休まずに無理をしてしまう」
「腰痛があっても労災申請をしない」
これは看護師の〝特性〟でもあります。より正確に言えば、看護師の多くは、腰痛で労災申請できるという認識すらありません。看護師の腰痛は労災認定されにくいことは確かですが、今回から看護・介護職の腰痛を含めた労災問題について事例を交えてみていきましょう。
労災認定されにくい、職業病としての腰痛
厚生労働省の調査によると、2019年に4日以上休む必要があった業務上疾病発生件数6015件のうち、保健衛生業(医療・社会福祉施設)は1750件(29%)と最多で、そのうち腰痛は1648件(94%)と大多数を占めます。実際に労災認定された腰痛の件数は公表されませんが、ここでは労災として認定される腰痛と認定されにくい腰痛の区別を知っておきましょう。
労災保険における「業務上腰痛の認定基準」では、腰痛を「災害性腰痛」と「非災害性腰痛」の2種類に区分しています(別表)。
「災害性腰痛」は、仕事中の突発的なケガが原因による腰痛のことで、何かの動作をしたときに突然腰が痛くなるケースです。例えば、車椅子からズレ落ちていた患者を抱え上げた直後に介護抵抗があり、態勢を崩して腰部を大きく捻って起きた急性腰痛症などです。
「非災害性腰痛」は、腰に過度な負担がかかる仕事を長期間行うことで腰への負担が蓄積された腰痛をいいます。
どちらの腰痛も、原因が業務によることが明らかで、医師から療養の必要があると診断された場合に限り労災と認められます。
一般的に「災害性腰痛」は労災認定されやすく、「疲労性腰痛」ともいわれる「非災害性腰痛」は認定されにくい傾向にあります。看護師が抱えている腰痛の多くはこの「非災害性腰痛」と判断される傾向にあります。
「腰の健康診断」を腰痛予防対策の一つに
腰痛予防対策として、厚生労働省が2013年に改定した「職場における腰痛予防対策指針」(以下、指針)では、福祉・医療分野において、移乗介助、入浴介助の際の抱え上げの仕方やなどの指針を定めています。腰痛の発生要因について、「心理・社会的要因」(いわゆるストレス)にも言及しており、ストレスの高い職場ほど腰痛の発生率も高いといわれます。コロナ禍のストレスも無縁ではないので、この機会に指針を見直してみるのもいいでしょう。
指針を踏まえて、職場でできる腰痛予防対策を次のように整理しました。
●腰痛の発生原因を的確に把握し、リスク回避の対策を立てる
●(腰痛の原因と考えられる)その作業が本当に必要なのかを見直してみる
●移乗介助の際の作業姿勢・動作を見直し、看護・介護マニュアル等に盛り込んで研修を行う
●機器・設備の改善・導入(リフト、スライディングボード等の活用)
●腰痛の健康診断を実施する(腰椎のレントゲン撮影を健康診断等に加える)
とくに看護職の多くは腰痛で労災申請できるという認識がないといわれますので、腰を痛めたなど、ケガにつながるようなことが起こったら、小さなことであっても上司に報告することを徹底することが大事です。
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