コンテンツへスキップ →

続・医師の働き方改革(1)

ある事務長さんの悩み

「医師の勤務時間管理を始めたいと考えています。ただ、精神科病院の当院は医師の残業も自己研鑽もほとんどなく、どのように管理をしていくのがよいのか……」

 医療現場の労働時間管理で最も重要なのは「勤務時間に区切りをつける意識」を醸成することです。

 そのためにも、働き方改革が求めている「労働時間を適正に把握すること」が重要になってきます。出勤時間と退勤時間から在院時間を把握し、医師の自己申告等により時間外勤務の内容(労働か労働でないか)を把握する仕組みをつくることです。実際、2024年4月から適用される医師の時間外労働の上限規制に向けて、コロナ禍にあっても多くの大学病院や公立・公的病院、民間の急性期病院を中心に勤怠管理の改善に取り組んでいます。

 また、厚生労働省が推進する「副業・兼業の促進」に伴い、「労働時間の通算」の規定が適用されることにも注意が必要です。医師の供給源である大学病院等の勤務医師について、兼業先(民間病院等)での労働時間を通算して時間外労働の上限を適用するものですが、医師の勤怠管理を全く行っていない病院にとっても、医師の労働時間の把握はいっそう求められています。

「時間の区切り」を意識づけることが大事

 医師の労働時間管理で把握すべきポイントは、第一に、出勤時刻から退勤時刻までの「在院時間」を把握すること。第二に、残業時間だけでなく、労働なのか自己研鑽なのか業務内容を特定して「時間外労働の内容」を把握することです。残業がほとんどない病院ほど、出勤簿に押印し、残業は自己申告という属人的な管理をしていますが、自己申告イコール「自由」ととらえる医師もいて、また上司も事務部門も確認しないため、出勤簿ベースの場合は時間外申請書で残業内容をきちんと管理すべきです。

 タイムカードやICカードを導入すると、最低限、入退館時刻(在院時間)を把握することができます。ICカードを導入して出退勤時刻の記録を開始したことで職員の労働時間管理の意識が高まり、医師や職員の早すぎる出勤を抑止するようになったという急性期病院の例もあります。

 医師による時間外勤務の自己申告の仕方にもひと工夫が必要です。ある病院では、タイムカードと併用している時間外勤務を明記する出勤簿の形式を改め、何時から何時までの残業で、理由は「緊急オペ」などと記入しなければならない従来形式から、理由を「呼出し」「手術」「学会資料作り」などからチェックする形に簡略化。この変更で、時間外勤務が積極的に記入されるようになり、出勤簿とタイムカードの時間の乖離がなくなってきただけでなく、医師に時間の区切りをイメージしてもらうことができたといいます。

 また、勤怠管理の改善にあたり「事務負担の軽減」も考慮すべき重要な要素です。労務管理にルーズな病院ほど管理部門の人員が少なく業務過多の傾向にあります。タイムカードを導入しても逆に事務負担が増えることがあります。その場合、勤怠状況の自動集計、給与の自動計算、シフト管理ツール内臓などの勤怠管理システムの導入を検討したほうがベターかもしれません。

 ある慢性期病院では、タイムカードから静脈認証による勤怠管理システムに変更。出退勤の情報を元に給与の自動計算、給与の自動振り込みまで可能となり、毎月の給与管理業務の時間が削減され、タイムカードによる管理に比べてコストは増加したものの作業人員が半減したといいます。

カテゴリー: 医療

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です