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看護管理者のマネジメント(8)

after・withコロナ――

ある看護部長さんの悩み

「能力の高い、仕事のできるスタッフが先日退職しました。理由ははっきりしませんが、忙しい病院なので、業務負担が原因かもしれません。能力差で不公平感が出ないような施策もそうですが、意識の高い、仕事のできるスタッフの離職を止める策はないものか……」

ハイパフォーマーのノウハウをチーム全体に広める

「できるスタッフ」のモチベーションを上げることは非常に重要なマネジメントです。人事考課で高い評価を与える、特別な手当てを支給するといったインセンティブも有効な施策の1つです。

 ただし、仕事ができるスタッフを重用し過ぎると、短期的な効果は望めても、チームとして長期的に見るとむしろマイナスかもしれません。仕事ができるハイパフォーマーのノウハウをチーム全体に広めてスタッフの底上げを図るほうがよいチームづくりができます。

 看護記録1つとっても、素早く記録できる人はどんな記録の付け方をしているのか、「あの人を見習って」と上司が口頭で言うよりも、記録の早い人に委員会等でスタッフの前で発表してもらうほうが効果的かもしれません。

 ある大学病院の師長さんと話したとき、「看護という仕事は1人の優秀なプレイヤーがいても成り立ちません。チームとしてどれだけ質の高いケアが提供できるかをマネジメントしなくては」とおっしゃっていました。

 能力が劣るからといって、初めから仕事を与えないでいると、そのしわ寄せはほかのスタッフが被ることになります。できる人がどんどん仕事をさばいてくれると、みんなが頑張って仕事をしなくていい環境が生まれます。まずは「やらせてみる」こと。そのためにも、的確な仕事の割り振りと指示が大事なのです。

ハイパフォーマーの〝容量〟にも配慮が必要

 仕事の割り振りを決める際に大事なのは、「できる人をつぶさない」ということです。このことはスタッフ全員の能力の底上げを図っていくプロセスの中では非常に重要な視点です。

 日々の業務に追われていると、日常的な残務も突発的な仕事も、ついつい同じスタッフに頼んでしまいがちです。しかし、頼みやすい人ばかりに仕事を頼んでいると、仕事ができる人でも残業時間が長くなります。仕事のできる人には、どんどん仕事が降ってくるものです。本人は意外に苦にしていないかもしれませんが、何かの拍子にふとわれに返り、モチベーションの糸がプツンと切れてしまうことがあります。これが怖いのです。

「適材適所」に仕事を割り振るためには、それなりの準備が必要です。前回説明した、業務量の「定量化」も大切な準備の1つです。

 また、能力の高い中堅スタッフのAさんに任せたい仕事がある場合に、Aさんと面談をして、Aさんが今抱えている仕事をすべて洗い出しておきます。仕事を割り振ることで負荷が超過しそうであれば、Aさん以外でもできる仕事をほかのスタッフにあらかじめ振り分けておきます。もちろん、ほかのスタッフの状況も把握しておく必要があります。そうすることで、新しい業務を無理なくこなせるように、Aさんの〝容量〟を空けておく必要があるのです。

 大事なのは、仕事を任せたいと考えている対象者だけでなく、チーム全員の能力と抱えている仕事の状況を把握し、必要ならほかのスタッフを巻き込むなど、その都度最適な仕事の割り振りを決定することです。

 これが業務配分におけるスタッフ・マネジメントのツボです。

カテゴリー: 医療

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