after・withコロナ――
職場の労災防止は看護部が中心になって取り組もう!
2020年の今年、新型コロナウイルスに感染した労働者からの労災申請が急増しました。その8割が医療従事者からの申請で、認定基準が緩和されたこともあり認定率はほぼ100%と異例の対応となりました。もちろんこれは「仕事でコロナに感染した」業務上の災害ですが、医療機関ではコロナとは直接関係のない、通常業務で起こり得る労災事故も平年より多く発生したように個人的には実感しています。
私の顧問先病院のなかにも、今年だけで8件の労災を申請したケースがありました。「それまで労災申請しちゃうの?」と思わなくもない事案もありましたが、この病院の場合、仕事上の些細なケガでも所属長に報告するよう徹底しているためで、労災問題に関してはむしろ良心的ともいえます。
とはいえ、事故内容を見る限り、コロナとほとんど関係のない、不注意からくる不安全行動が原因と思われる事案ばかり。夏から秋にかけて3件立て続けに事故が発生した病棟では、主任が神社へお祓いに行ったほどです。「労働者私傷病報告」(休業4日以上)の必要な事故はそのうち4件ですが、短期間に事故が多発したため、当然ながら労基署の立ち入り調査が行われることとなりました。
いずれにせよ、職場で労働災害が発生したときは、病棟だけの問題として処理せずに、法人全体で防止のための原因を究明し、対策を検討する必要があります。
形骸化している衛生委員会の機能強化が必要
今回の労基署の立ち入り調査では、担当監督官から次の4つの指導事項を指摘されました。
(1)労働災害が発生した際には、発生状況の確認、原因の究明、対策の検討を行うこと
法人全体で労働災害の防止に取り組むためには、その機能が形骸化している「衛生委員会」の機能強化が必要です。どこの病院でも医療安全管理を主題とした安全委員会は機能しているので、衛生委員会と安全委員会を一体化したり、安全委員会のメンバーを拡充して委員会で衛生事項を審議するなどして、自院の実情に合わせて「職員の安全衛生」について協議する場を設けてください。
(2)労働災害防止(とくに腰痛予防)の観点から作業マニュアルの項目を見直すこと
腰痛予防対策を業務マニュアルに盛り込み、研修などで教育していくことです。「腰痛体操」を日常的に取り入れている病院もあります。
(3)本部と各施設の連携(ヒヤリハット事例の情報共有、遵守事項の水平展開等)を推進すること
小売業・社会福祉施設・飲食店の労働災害の減少に向けて、厚労省が展開している「働く人に安全で安心な店舗・施設づくり推進運動」に基づいた指導事項です。要するに、医療法人が運営する老健、特養など関連施設を含めて情報を共有し、法人全体で労働災害に取り組むということです。
(4)労働災害の防止活動を進めるとともに、活動を担当する安全推進者を選任すること
職場巡視の強化、安全推進者(小売業・社会福祉施設・飲食店を対象に配置が努力義務とされている)の選任により、労働災害防止活動の実効性を高めることです。
労災事故が多発した顧問先の病院では、便宜上、看護部長を安全推進者に選任しました。医療機関で最も多く労災事故が発生するのは病棟と外来部門ですので、自院の実情を考慮すると看護部長が適任という場合が多いかなと思います。
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