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「雑談」も申請!? 管理職の意識をも変えた管理方法
事務長と交流のある、某リハビリテーション病院(220床)の勤怠管理の事例を紹介します。
この病院では、時間外勤務申請書に「タイムカードの乖離理由」を本人に記入・申請させる勤怠管理の手法を取り入れています。
職員は出勤時に通用口に設置されたタイムレコーダーで打刻し、更衣など準備を終えてから所属部署へ行き業務を開始します。退勤時は更衣など帰り支度を終えてからタイムレコーダーで打刻して退勤します。
こうしてタイムカード記録で院内滞在時間を把握。時間外勤務については、毎月職員に配布する「勤務報告書・時間外申請書」(表参照)で管理します。ここまではどこの病院でも見られる勤怠管理の方法ですが、この病院が特徴的なのは、タイムカードの「乖離理由」の記入欄があることです。
「30分以上」の乖離理由を明らかにする
「勤務報告書・時間外申請書」は毎月総務課から全職員に配布しますが、申請書を職員個々が管理するか、所定の場所にまとめて置いて管理するかは部署によって異なります。
申請書の内容は、「所定内勤務」「時間外申請」「タイムカードの乖離」の大きく3つの項目に区分されています。
「時間外申請」は、職員本人が理由と共に事前申請をして所属長が認印を押して、業務終了後に本人が結果を申請して、所属長が翌日確認して認印を押すというのが基本的な流れです。
「タイムカードの乖離」の欄には、例えば、残業をしないで定刻の17時30分に業務を終えたのに退刻記録が18時10分であったり、時間外申請は18時30分までなのに退刻記録が19時30分であったり、30分以上の乖離があった場合に、乖離理由を本人が記入するしくみです。乖離理由を記入するタイミングは、30分以上の乖離が発生した都度確認するか、月ごとにまとめて確認するか、部署によって異なりますが、いずれにしろ所属長が確認し、問題があれば指摘します。その後、総務課でも確認し、疑問点があれば所属長に訂正依頼をするという流れです。
実際に職員が記入する乖離の主な理由は「雑談」「自己研鑽」「帰り支度」の3つ。以前は業務なのかそうでないのか総務課では判断がつきにくい内容もありましたが、現在はほとんどありません。
看護研究は「時間外申請」、勉強会(自由参加のもの)は「タイムカードの乖離」として申請され、業務か業務でないのかの共通認識を管理職とスタッフが持てるようになっています。また、「雑談」で30分以上の乖離があるような場合は必ず〝相手〟がおり、本人だけの問題ではないため、程度によっては所属長が注意を促すようにしています。
こうした日々の時間管理をすることで「30分以内で帰ろう」という職員の意識づけにもつながっているといいます。
ちなみに職員が記入する乖離理由のほとんどが「雑談」「自己研鑽」「帰り支度」の3つであるのには理由があります。
乖離理由を本人が記入する方式にしたのは2年前からですが、それ以前はこの3つを選択式にしており(「その他」を加えて4つ)、その習慣が残っているからです。選択式は職員の記入しやすさを考慮したものですが、法人グループの他の病院が労働基準監督署から「選択方式は必ずしも本人の意思が反映されているとは言えない」と指摘されたことがきっかけで記述方式に変更したという経緯があります。
管理職の〝本来業務〟に気付かせる効果も
タイムカードやICカードで勤怠管理を入している病院では、「タイムカード記録の乖離」が常に問題視されています。多くの場合、乖離の理由を所属長や事務部門が口頭で確認して注意を促すのが一般的ですが、日々の業務に追われ、あるいは面倒なため、その状態が放置されているケースが少なくありません。
この病院の場合、タイムカードの乖離理由を客観的に把握できるしくみにすることで、「時間内に業務を終える」「決められた時間に帰る」という、時間管理の概念を職員に一定程度植え付けられたといいます。それ以上に、管理職の意識を変えたことが大きな成果だそうです。
管理職の本来業務は部下の業務や労働時間を管理することです。「管理職に気付きを与えられたことが一番大きいかな」と事務長はいいます。
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