◆ハラスメントは病院よりも診療所で起こりやすい
一般に職場環境を悪化させる要因の一つに、ハラスメント問題があります。都道府県労働局に寄せられる労働相談の中で、平成24年に「いじめ・嫌がらせ」などのパワハラに関する相談が「解雇」を抜いて初めてトップになって以来、相談件数は右肩上がりに年々増えています。
職場内でのハラスメントとして、いじめ・嫌がらせを含めた「パワハラ」、性的な嫌がらせの「セクハラ」、妊娠や出産、育児休業を理由とした不利益や解雇などの「マタハラ」の3つが問題視されていますが、診療所の場合は、3つ目の「マタハラ」がけっこう起こっています。その理由は、診療所はスタッフの人数が限られてくるため、スタッフが一人でも育児休業で抜けると病院に比べて診療所のほうがはるかに影響が大きいからです。診療所によっては、妊娠したら退職というのが既定路線になっているケースもあり、労働局への相談事例も増えています。
昨今は「働き方改革」が社会に定着してきており、評判の良い診療所の多くは、法令の遵守やきちんとした制度運用をして優秀な人材の確保と定着に努めていると言っていいでしょう。
◆看護師はメンタルヘルスが不調になりやすい!?
ハラスメントと同様に、メンタルヘルスの問題も医療機関では人材マネジメントの重要課題です。医師や看護師は体力的にも精神的にも負担が大きい業務のうえ、患者・家族からのクレーム等も重なり、メンタルヘルスに不調をきたす要因は複合的に存在します。厚労省の「過労死等の労災補償状況」を見ると、精神障害(主にうつ病)の請求件数で、「医療業」は「社会保険・社会福祉・介護事業」に次いで多く、その7割は女性(主に看護職)です。看護師は「共感性」が高いこともメンタルヘルスに不調をきたしやすい要因とも言われています。
院長がスタッフのメンタル不調に対する対応を誤ると訴訟リスクも高まります。そうしたことにならないように、評判の良い診療所の多くは、普段からスタッフとコミュニケーションをとり、職場環境づくりに注意を払っています。
(つづく)
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