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育介法?「いい加減にして!」事案(2)

前回の続き。

【ケース2】育休延長厳格化の最中の〝不正〟に振り回され

 2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが厳格化されました。これまでは保育所等に入所できないことについて市区町村の発行する入所保留通知書などにより確認していましたが、改正により、これまでの確認に加え、保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写しが必要となりました【※解説2】。これは不正受給の是正を目的としたものですが、改正後の5月、筆者の顧問先病院でも育休延長に係る〝不正行為〟に直面し、病院も顧問社労士も市役所担当者も一人の看護師に振り回された事案です。

●事の経緯

▶病棟勤務の看護師Sが、2022年8月に第1子を出産し、2歳までの育児休業延長中の2024年6月に第2子を出産。翌月末から第2子の育児休業を開始(2025年6月に育休終了、復帰予定)。8月には第1子の育児休業終了。結局、2022年8月から2025年6月まで継続して産休・育休を繰り返している状況。

▶2025年4月中旬、6月の復帰に向けて病棟師長が本人に近況を確認したところ、第2子(0歳児)は保育園に入園が決まったが、第1子の入園手続きを怠っていたため入園できなかった旨の報告を受ける。(Sは第1子もすぐに入園できると安易に考え4月になってから保育園の申し込みを行ったが時期が遅すぎた)。

▶その結果、第2子は入園できたが第1子が入園できない状況となり、6月の職場復帰が困難となった。こうした場合、第1子は無認可保育園等に預けてでも予定通り職場復帰するのが通常と考えられるが、Sは第2子の育児休業を延長して給付金を受給するため、入園が決まっていた第2子の入園辞退を市役所に願い出て、市役所担当者に入園保留通知を出してもらった。

▶保育園の入園を一度辞退すると、育児休業の延長は認められず、育児休業給付金の支給対象期間の延長要件からも外れ受給できなくなるが、Sの要望に応じた市役所担当者の行為にも問題があると思われる。事務長が担当者に確認したところ次のような回答があった。

「ご本人も軽率なのですが、第1子と第2子が同じ保育園に一緒に入れないので保留にしたもので……。一度入園を辞退したことは公にしないでほしい……」

▶この経緯について筆者がハローワークに確認したところ、「正確に確認して後日回答します」と言われ、数日後に「やはり辞退していますので支給対象にはなりません」との回答を得た。労働局(雇用環境・均等室)でも同じような回答を得た。

ルールがあってこその子育て支援

 一連の経緯については事務長がS本人からも直接電話で確認しましたが、第2子の保留通知の理由を改めて聞いたところ、「希望した保育園に入れなかったため」と虚偽とも思われる発言があり、事務長も「彼女にはお手上げです……」とのことでした。

 そこで、筆者の助言を受けて、事務長はSに対して、第1子については無認可でもいいから預けて予定通り6月に復帰するか、1か月猶予(育休延長、病院としてリスクを負えないため給付金は申請しない)を与えるのでその間に2人の子の保育園を探して復帰することを提案。結果的に2人とも保育園には入園できたため、7月にはなんとか職場復帰することができました。

 こうしたケースで育児休業の延長が認められない場合、病院の任意で一定期間延長することもできます(社会保険料は労使ともに免除されるが給付金は対象外)。しかし、他の職員との公平感や企業秩序の維持の観点からも、厳格に対応すべきと判断したものです。

カテゴリー: 介護 医療

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