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「夜勤ができないならパートになれ」は退職勧奨か会社都合退職か(1)

Case Study

 夜勤を行うことを「常勤」の勤務条件としている病院において、「夜勤ができないならパートに」と打診された職員がそれを拒否して自主退職した場合、打診した理由を問わずその言動は退職勧奨にあたるのか、会社都合退職にあたるのか――。

 5月末日、A病院にハローワークの雇用保険適用係から、「3月に退職したSさんより離職理由に関する申し立てがあり、退職の経緯について事実確認をしたい」と連絡が入った。2月某日、病棟主任より「夜勤をやらせられない」と突然言われ、後日、看護部長と師長に呼び出され、夜勤をやれない場合はパートになるしかないと言われた。本人は(リハビリ中の)足を治して働きたいと伝えたが、病院から今後については家族と相談するように言われたというが、退職勧奨ではないかと。病院としては寝耳に水の話だが、結果的に「退職勧奨にはあたらないが、会社都合退職になります」とされた顛末とは。

「パートになれ」は退職勧奨でも、雇用の継続を前提としたものならば

 護師の雇用形態は「勤務制限のない常勤」か「勤務制限のあるパート」の二択がひと昔前の慣例でしたが、働き方の多様化や人材の確保と定着のためその傾向も薄れ、一定の条件のもとで「夜勤免除」を採用している病院が増えました。

 ただ、A病院のように、採用の段階から夜勤を行うことを常勤の勤務条件(当院はヘルパーも)としている病院も一定数あると思われます。今回のケースは夜勤手当を生活の糧としているヘルパーの事例ですが、夜勤は、病院と職員がwin-winの関係にあることも一面としてあります。

 近年の子育て支援強化で最近はあまり耳にしませんが、「夜勤を断ると退職を強要された」、「パートになれと言われた」と問題になるのは、育児・介護休業法に基づく深夜労働の制限【※解説1】など法律に則った免除を申し出た際に起こるトラブルです。しかし、今回のケースは全く異なり、職員本人の病気によりやむを得ず夜勤から外れてもらい、パート勤務を打診したというのが経緯です。

ヘルパーSの退職の経緯とは

▶ヘルパーとして勤続15年のSは、白内障により視力が低下してきたため、勤務負担の軽い病棟に異動して日勤・夜勤の交代制に就いて働いていた。

▶約10年前に白内障の手術をしたが回復せず、視力は年々低下し、すでに片目は失明しており、運転するのも困難なため妻の送迎で通勤している。眼内レンズも入れており、文字は10cmくらいのところでどうにか見える程度の視力で仕事をしていた。

▶糖尿病も患っており、仕事中に低血糖を起こして休憩することもあった。その影響か膝も悪く、まともに階段も上れないため、エレベーターを使用していた。膝については今はリハビリ状態とのこと。

▶業務面においては、おむつ交換など患者の世話がきちんとできない。汚れていても見えないため、おむつやリネン、寝衣が汚染されたままのことがある。トイレ掃除も他のスタッフに頼んでやってもらっている。不穏な患者の対応は危険なため任せられない。配薬も名前を確認するのに時間がかかり患者からもクレームがあった。また、他の仕事を与えようにも文字がよく見えないため事務的な仕事も与えられない。

▶夜勤は職員2名体制だが、Sがこの状況なので一緒になった職員に負担がかかり、その職員は何かあったら怖くて不安だと訴えていた。

▶そうした中、昨年11月某日の夜勤明けの日に、廊下にあるシーツが見えずに転倒して負傷。回復しても同じことが起こる危険性があるため、夜勤は難しいと判断した主任が本人に「これ以上夜勤はやらせられない」という旨の話を伝えた。

▶その後、看護部長と師長から、膝の状態や視力の低下等を考慮し、他の職員にも負担がかかっている現状を踏まえてパート勤務を進めたところ、Sは、「じゃあ辞めます。夜勤ができると思ってリハビリをしているのに」と不満を訴えて退職した。

カテゴリー: 介護 医療

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