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ここが変だよ勤務表!(3)

ある病棟師長さんの悩み

「看護や介護の職場は人員配置基準があるため、急な欠勤者が出たときなど勤務変更は毎月のように必ず生じます。ところが先日、新任の総務課長から〝勤務変更するのは仕方ないけど、変更の仕方によっては時間外勤務が発生するので注意してください!〟と忠告されました。勤務変更することで時間外勤務が発生するってどういうこと?」

残業をしなくても、勤務変更すると時間外勤務が発生する

 看護や介護のように長時間の夜勤のある職場では、1か月単位の変形労働時間制を運用しています。この制度は、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間の40時間以内に収まれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせることができます。そのため、16時間夜勤など8時間を超える所定労働時間を設定しても時間外割増が生じないというものです。

 ただし、勤務変更の仕方によっては、その日とくに残業をしていなくても時間外勤務が発生してしまうことがあります。

月の労働時間には上限がある

 1か月単位の変形労働時間制を採用した場合、月の労働時間には上限があります(表参照)。4週8休などの勤務シフトを組んでいる以上、月の上限を超えて勤務表を作成してしまうケースはほとんどないと思いますが、休日出勤をして、同月内に振り替えができない場合、月の上限を超えてしまい、時間外勤務が発生することがあります。

 さらに、連勤が続く週に休日出勤した場合、同一週内に休日の振り替えができなければ週単位でも時間外勤務が発生することがあります(表参照)。ちなみに、就業規則に規定していなければ「1週間」とは日曜日から土曜日までの1週間をいいます。

原則、一度決めた勤務表は変更はできない

 労働基準法上、変形労働時間制は、一度確定した勤務表を途中で変更できないのが原則です。しかし、医療・介護の職場では人員配置基準の維持など業務上の必要に応じて勤務変更が必ず生じます。そのため就業規則に勤務変更をする根拠規定(表参照)を設けておく必要があります。余談ですが、この規程を就業規則に設けている医療機関はほとんど見かけません。

安易な勤務変更は認めない方向で

 当たり前のように自由に勤務変更をしていいわけではない。勤務変更の仕方によっては残業をしていなくても時間外労勤務が発生することがある。このことを理解している看護職はほとんどいません。事務部門でもそう多くはいません。このことは勤務表作成ソフトを使用していても、アナログ管理であっても同じように注意する必要があります。

 とはいえ、変形労働時間制における時間外労働が発生する組みは労基法上かなりマニアックなルールです。実際、労働者に申告されでもしない限り、労基署がこの点を追求してくることもありません。実際に私は複数の監督官から「そんなところはいちいち追及しませんよ」という言葉を耳にしました。

 こうしたことに看護管理者があまり神経を尖らせる必要はありませんが、知識としてもっておくべきです。そして、安易な勤務変更は認めない、連勤が続く週の休日出勤は極力避ける。これくらいのことは看護部内で徹底しておくべきかと思います。

 よく、同業の社労士で「看護師は変形労働時間制すら知らないんですよ」と言う方が多くいらっしゃいます。しかし、こういう価値観の社労士ほど医療・介護の現場を知りません。看護・介護職が変形労働時間制を知らないのは当たり前の話です。深く理解する必要もありません。法律論を真正面から説明するのではなく、現場の実態に即して、勤務表の休日処理の仕方や時間外勤務のツボを理解させて改善につなげるのがプロの仕事術だと痛感しています。

 ここでは下の表のように原則的な説明を載せましたが、こうした話を手を変え品を変え、看護・介護職の方々に「なるほどね」と理解してもらえるのが小さなやりがいでもあります。

カテゴリー: 介護 医療

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