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看護管理者のマネジメント(9)

after・withコロナ――

ある看護部長さんの悩み

「最近、能力不足や勤務態度のよくないスタッフについては、ある程度割り切った指導が必要だと感じています。それよりも、能力も意識も高い「できるスタッフ」のモチベーションを高めるためのマネジメントに苦慮しています……」

 仕事のできないスタッフが2人離職することよりも、優秀なスタッフが1人離職することのほうが組織に大きな痛手となることが多々あります。残されたスタッフの負担が増すだけでなく、優秀なスタッフが育児や家庭の事情等の理由以外で離職すると、残されたスタッフは「この病院に何か問題があるのでは」と疑心暗鬼になり、職場全体のモチベーションの低下につながることがあるからです。では、どうすれば……。

優秀な人材の確保・定着には「働きがい」が不可欠な要素

 優秀な人材を確保するための施策を「リテンション・マネジメント」といいます。これを実施することで、従業員が会社に愛着を持つようになり、離職率の低下につながるといわれています。ただし、給与や休暇、労働時間の長さなどの勤務環境の改善や福利厚生の充実だけでは優秀な人材は定着しません。

 医療施設は女性の多い職場です。看護師確保のための子育て支援や福利厚生は必須ですが、福利厚生の充実をもって〝ガス抜き〟しようとする病院が少なくありません。

 優秀な人材には「やりがい」、「働きがい」といった要素が不可欠です。どんなに福利厚生が充実していても、「この病院にいても自分の成長は望めない」と考えれば、より良い環境を求めて離職してしまいます。

 医療・介護業界は「人が定着しない」といわれる分野です。特に看護師は人材流動性が高く、子育てやスキルアップなどを理由にライフステージによって職場を変えていく傾向が強い職種です。そうした中で優秀な人材の確保と定着を実現するためには、教育環境の整備や資格取得支援などスキルアップ支援による「働きがい」のある職場づくりも大事な要素です。

 クリニカルラダーの整備、OJTの拡充、認定看護師の資格取得支援など、看護師のキャリアやスキルアップのためのサポート体制そのものは多くの病院で見られます。ただし、そのことが児施設の看護職の「働きがい」に本当につながっているのか、見直してみてはどうでしょうか。

「もっと成長したい」をサポートする院内制度

 400床以上の規模を持つある総合病院の事例を紹介しましょう。

 この病院では、深刻な看護師不足に陥った時期に、子育て支援と福利厚生の充実を図りました。さまざまな施策を講ずるたびに一時的には改善はしたものの、離職率の改善にはなかなかつながりませんでした。

 そこで、事務部門と看護部の協働で看護部アンケートを実施したところ、「専門職としての研さんを積みにくい」「スペシャリストとしてもっと成長したい」といった意見が多く出ました。そこで、クリニカルラダーの整備やOJTの強化、資格支援制度の見直しに加えて、制度の周知徹底を図ることで15%以上あった離職率が一桁まで改善されたといいます。

 もちろん、公平な勤務環境を整備し直すといった施策も同時に進めた結果ですが、看護師だけでなく、コメディカルなど他職種に対しても資格取得時の一時金の支給など必要な支援に取り組んだ結果、コメディカルの能力・技能を高めてチーム医療の強化を図ることができたといいます。

 afterコロナを見据えると、人材確保のマネジメントには、「働き方改革」よりも「働きがい改革」のほうが大事だと考えます。

カテゴリー: 医療

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