after・withコロナ――
ある病棟師長さんの悩み
「勤務が終了してもなかなか帰らないスタッフがいます(特に日勤常勤者)。他のスタッフへのフォローや記録が残っていることを理由に、30分から1時間必ず残業をつけて帰るスタッフもいて、どう指導していいか困っています……」
入職当初の働き方に対するスタッフ教育がおざなり、あるいはミッションやルールが周知徹底されていない職場ほど、「早く業務を終えようとする姿勢がない」という、ダラダラ残業常習犯の割合が多いものです。
必要のないダラダラ残業や安易な残業をなくすためには、残業の「許可制」をきちんと運用するのが一番です。
残業は本来、業務上の必要に基づいて上司の命令で行うものです。ほとんどの病院では、「時間外勤務は、緊急やむを得ない場合を除き、所属長の指示があった場合に認める」という内容が就業規則の時間外労働に関する条項にあります。
「残業は業務命令で行うもの」という考えを管理職もスタッフもしっかりと認識しておくことが必要です。
一般的には、スタッフが上司に残業を申請し、上司が残業の必要性を判断した上で許可し、「その業務は1時間で終えるように」と時間の目安を示して業務命令を出すというのが残業許可制の基本的な考え方です。ただ、「わかってはいるけど運用が思うようにはいかない」というのもまた現実です。
・部下から申請された時間外業務の内容をよくチェックもせずに全部承認してしまっている
・忙しくチェックしている時間がない
・業務量的に明らかに残業が必要なのに理由も聞かずに許可をしない
こうしたことはありがちです。また、緊急の入院対応や夜勤時の緊急業務など、時間外の業務が「事後承諾」になることも多々ありますが、その場合であっても業務内容をしっかりと確認し、事後承諾が当たり前にならないようにしなければなりません。
残業の「理由」を業務改善に生かそう!
残業許可制を実効性あるものにするには、残業の「理由」を業務改善に生かす視点が大事です。残業許可制の運用ポイントいくつか挙げておきましょう。
(1)残業の理由を明確にさせる
「何のために残業をするのか」「なぜその業務が残ってしまったのか」を確認します。時間外勤務申請書の理由欄に「看護記録」とだけ記入させるのではなく、「なぜ看護記録が残ってしまったのか」を確認します。原因を本人と上司で確認し合うことで改善につなげることができます。残業理由が本人の能力の問題であれば、個別の指導や記録業務のさらなる標準化を進める必要があります。
(2)緊急性・必要性を判断する
その残務が、「要当日処理」なのか「翌日処理で可」なのかを確認します。また、その業務は「あなたがやらなければならない業務」なのか、「補助者や次の勤務交代者で対応できる業務」なのかを確認します。後片付けなど他の人に任せられるものは任せでください。
(3)業務の上限時間(目安)を指示する
「その業務は30分で終えて」と、目標時間を指示します。ただし、「30分以上は認めない」と上限設定することとではありません。
(4)スタッフの健康状態に配慮する
休憩はちゃんととれたか、連日厳しい勤務が続いていないか、体調に問題はないかなどを確認します。こうしたことは残業申請が出される前に確認しておく必要もあるでしょう。
(5)時間外勤務の定義を明文化しておく
運用面だけでなく、法人における時間外勤務の定義(割増賃金の支給要件)を明文化しておく必要もあるでしょう。「時間外勤務は所属長の指示があった場合に限り認める」という旨のルールを就業規則だけでなく、時間外勤務申請書にも念を押して記載している病院も実際にあります。
また、チームで働く看護職場の特性を考えた仕組みも最近はよく見聞きします。その1つが、病棟で交代前に行う「終礼」です。
例えば、ある大学病院では、毎日、日勤終了間際にその時間の勤務者全員がナースセンターにいったん集合し、残務の確認などを行います。そうすることで残務のあるスタッフをサポートしたり、残業するスタッフをその場で選定します。いったん集まることで「業務終了」をスタッフに意識付けることで、 無駄な残業の削減にも効果を上げているそうです。
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