after・withコロナ――
とある民間病院の総務担当者が、半ばあきらめの顔で私に打ち明けてくれました。
「労災防止のためには、衛生委員会の役割や職場巡視などの活動が重要なことは承知しています。ただ当院の場合、衛生委員会とは名ばかりで、その存在すら職員に周知されていません。そのため、衛生管理者や産業医による職場巡視も年間に一度も行っていないのが実情です。まぁ、医業収入に直接影響しない活動だからなんでしょうけれど……」
「働き続けられる職場づくり」のために職場巡視は必要
労働安全衛生法では、事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに衛生委員会を設置しなければなりません。また、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに衛生管理者と産業医を選任し、衛生管理者は毎週1回、産業は毎月1回、職場を巡視することとされています。
法令上、衛生委員会を設置していないと罰則はありますが、職場巡視等の職務など運用面については特段の罰則はありません。そのためではないでしょうが、職場巡視を年間に1回も行っていない病院も少なくないといわれています。しかし、定期的な職場巡視は労働災害防止活動の基本となる取り組みです。
あえて言いますが、職場巡視などは、「まわれる人がきちんと職場をまわる」「巡視による情報を委員会で共有して対策を立てる」ことが重要であって、週1で巡視することが事実不可能な衛生管理者(医師や薬剤師を選任している場合など)や産業医に限らなくても、「実効性」を担保することのほうが大切だと考えてください。
ただ、現在のコロナ禍では、感染対策のため施設間のゾーニングを行うなど職員間の移動について厳重に切り分けを行っている病院も多いと思いますので、当面の間、部門ごとに「職場巡視チェックシート」などを活用したセルフチェックを実施するとよいでしょう。
職場巡視の進め方については、重点チェック項目を決めて全職場をまわるやり方や、職場を決めてまわるといった方法が考えられますが、一般的には、職場巡視の際の指摘事項が多い「病棟」「外来」に重点を置いたほうがよいでしょう。
なお、職場巡視チェックシートは、「記録」として残すためにも、衛生委員会の議題に上げるためにも重要です。チェック項目が多いと大変だという場合でも、「通路の安全」「4S」「衛生、保護具の管理」「廃棄物処理」といった重要チェック項目に絞った内容にするとよいでしょう。
病院の労働災害発生源は病棟、すなわち看護部門です。看護部が中心となって「働き続けられる職場づくり」に取り組んでください。
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