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労働時間管理の7つのポイント

after・withコロナ――

 コロナ禍にあって、着実に取り組めている医療機関はどれだけあるのか?

 そう、働き方改革の核心でもある「労働時間管理」のポイントを対策を含めて確認しておきましょう。

◆ポイント① 「労働時間の状況把握」が大前提

 労働安全衛生法の改正により、管理監督者を含めたすべての労働者の「労働時間の状況の把握」が義務づけられています。医師による面接指導の強化が目的ですが、タイムカード等を必ず導入しなければいけないわけではなく、出勤簿による勤怠管理であっても、実際の労働時間と自己申告との乖離を確認することが求められます。

「実労働時間で管理しなさい」と言っているわけではなく、最低限「在院時間」を把握しなさいということです。法改正を受けて、「出勤簿に押印、時間外勤務は別途自己申告」という管理方法からタイムカード等の導入した公的病院も増えました。

◆ポイント② 残業は「命令で行うもの」を徹底

「労働時間管理は残業管理」と言っても過言ではありません。残業時間を管理するためには、許可制・承認制をきちんと運用することです。具体的には次の3つの点に留意してください。

①残業理由を明確にさせる

「何のためにするか」を確認する。許可はしても、「なぜその業務が残ってしまったのか」を確認する。例えば、なぜ看護記録が残ってしまったのかを記入させて、改善につなげます。

②残業の緊急性・必要性を判断する

「今日やらなければならない業務か」「あなたがやらなければならない業務か」を確認する。補助者や次の勤務交代者で対応できることは任せます。

③時間の目安を指示する

「その業務は1時間で終えるように」と時間の目安を示す。「新人は○分、3年目は○分」と経験値により目安を設定してもよいでしょう。

 病棟で「終礼」を実施する看護部も増えています。例えば、毎日、日勤終了間際に、できるだけ病棟の勤務者全員がナースセンターに集合し、残務の確認などを行い、残務をサポートしたり、残業する職員を選定します。いったん全員が集まることで業務終了を意識付け、無駄な残業の削減に効果を上げています。

◆ポイント③ 「休憩時間」の処理は適切か

 緊急入院の対応などで休憩が取れなかったときの不適切処理が散見されます。休憩がとれなかった場合、労働基準法の趣旨として、「他の時間に休憩を与える余地がないか」をまず検討します。60分の休憩は無理でも、他の時間帯に30分ずつ分割して与えても構いません。他の時間でも休憩が取れなったときに、取れなかった時間を労働時間として扱います。この場合、タイムカード等では把握できないため、時間外勤務申請書などで申請するのが一般的です。

◆ポイント④ 〝前残業〟は実態把握とルールづくり

 看護部の〝前残業〟は普遍的な課題です。だいぶ改善されてきたように思いますが、要は「程度」の問題です。始業時刻より30分以上前に出勤して何をしているのか、自主的なのか業務上やむを得ないものなのか、実態を把握したうえで、その実態に応じた対応を取ることです。その結果、「30分以上前の出勤禁止」としたり、交通事情などで早く出勤したときのために食堂を開放したりして〝前残業〟を抑制している病院もあります。

 始業前の時間は、上司の指示があった場合を除き「労働時間として取り扱わない」ことを周知徹底しておく必要もあります。

◆ポイント⑤ 「乖離」は、時間と理由を管理する

 タイムカードやICカードで勤怠管理をしている病院では、「タイムカード記録との乖離」が常に問題視されています。

 例えば、残業申請された時刻とタイムカードの退勤記録に60分の乖離があった場合に、この乖離の理由を本人に確認または申告させて、問題があれば改善を求めます。居残っていた時間が労働時間にあたらない時間であれば、「仕事を終えたら早く帰る」ことを意識づけ、逆に居残っていた時間が労働時間にあたる場合には労働時間として扱い、スタッフに残業申請方法について改めるよう指導します。

 このような乖離の理由を時間外申請書で申請させて、労働時間マネジメントに活用している事例を次回紹介します。

◆ポイント⑥ 研修や自己研鑽の院内ルールを決める

 院内研修や勉強会は、出席が義務付けられていなければ原則的に労働時間とはされません。逆に、研修の企画、運営等の準備作業でも自主的に行うものでなければ労働時間とみなされます。看護研究を〝自己研鑽〟と扱っている看護部も相当数ありますが、実態からみて、ほぼ間違いなく労働時間とみなされます。

 出席率が問われる医療安全や感染症対策などの法定研修の場合、同じ内容で30分間、複数回実施するなど、実施する時間帯や回数、研修時間を工夫している病院も多いようです。ただし、病院として出席を強制してはいないものの、所属長の判断で非番の日でも半ば強制的に出席させられている事例もあるので注意してください。

 他方、自己研鑽や自主的な研究は原則労働時間には当たりません。研鑽が労働時間とみなされるポイントは「指揮命令の有無」と「業務関連性」の2つです。上司の指示があるかないか、業務に関連があるかないかで総合的に判断されます。ただし、業務命令ではないが、それをしないと業務に支障を来すような場合、そのことを上司が知っていながら黙認していると「超過勤務の黙示の指示」(昭和25.9.14基収2983)と評価され、労働時間とみなされる場合があります。

◆ポイント⑦ 「勤務間インターバル」と「オンコール」

 勤務時間外の確認ポイントを2つ取り上げておきましょう。

 働き方改革で努力義務化された「勤務間インターバル制度」は、終業から翌日の始業までの間に、一定の休息時間を確保することです。看護部門の場合、勤務割作成基準で「11時間の勤務間隔を必ず開ける」とルール化しているケースも多いと思います。残業をした場合にも、残業終了時刻から次の勤務開始時刻までの間が「勤務間インターバル」となるため、3交替制における勤務間隔の詰まったシフトに注意が必要です。

 オンコールについては、労働基準法に規定はありません。一般的に労働時間に該当しないとされていますが、呼び出しがあるまでは全く自由であるかどうか、場所的拘束の程度はどうかなど、拘束性の度合によって労働時間と指摘される余もあるので取り扱いを明確にしてください。手当については、1,000円~4,000円程度の「待機手当」を支給している病院が多いようです。

◆番外編 「着替え」は労働時間か

 いつ問われても、悩ましい問題です……。

 一般的に、法令に基づく防護服や一定の作業着等を所定の場所(更衣室等)で着用することを義務付けられていれば原則として労働時間とされます。その点、業務の性質上、制服でしか勤務できない病院や診療所での更衣時間は労働時間とみなすべきなのです。

 ちなみに厚労省の『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』(指針)においても、「労働時間」であると明文化されています。

 しかし、実際問題として、更衣時間については労働時間外として取り扱っている病院が大多数です。労働時間に組み込んでいる病院の場合でも、労基署に指導されたためではなく、職員に「着替えも勤務時間になるのでは」と指摘されたために仕方なく労働時間にカウントしているというケースもあります。

 なかには、始業・終業の前後「15分」を一律労働時間にカウントしている病院もあります。また、更衣等の準備行為は男女で個人差があるため労働時間としてはカウントしていないものの、着替えに要する時間を平均10分と換算したうえで一律500円の「更衣手当」を定額支給しているケースもあります。

 コロナ禍でこうした問題も完全にスルーされていますが、「労働時間の状況把握」が義務化されている以上、更衣時間の問題も今まで以上にクローズアップされる場面が出てくると思われます。

カテゴリー: 医療